キャッシュレス決済が当たり前になった今、店頭でカードを使う人を見かけない日はありません。しかし、そのカードがクレジットカードなのか、それともデビットカードなのか、見た目だけでは判断できないことをご存じでしょうか。
両者の違いを正確に理解していないと、使うべき場面で使えなかったり、逆に使いすぎて後悔したりすることもあります。それぞれのカードには明確な仕組みの違いがあり、用途に応じた使い分けが重要です。
クレジットカードとデビットカードの基本的な違い
2つのカードは見た目こそ似ていますが、支払いの仕組みが根本的に異なります。この違いを理解することで、自分に合ったカードを選べるようになります。
支払いのタイミングが決定的に異なる
クレジットカードは後払い方式です。カード会社が一時的に代金を立て替え、毎月決まった日にまとめて銀行口座から引き落とされます。つまり、購入時点では手元に現金がなくても買い物ができる仕組みです。
一方デビットカードは即時払い方式で、カードを使った瞬間に紐付けられた銀行口座から代金が引き落とされます。三井住友銀行の解説によると、この仕組みにより口座残高を超えて使うことができないため、使いすぎを防げる利点があります。
| 項目 | クレジットカード | デビットカード |
|---|---|---|
| 支払いタイミング | 後払い(翌月以降) | 即時払い |
| 審査 | 必要 | 原則不要 |
| 年齢制限 | 満18歳以上(高校生除く) | 満15歳以上 |
| 支払い回数 | 1回払い・分割払い・リボ払い等 | 1回払いのみ |
| 利用限度額 | 審査で決定 | 口座残高が基本 |
審査の有無で発行しやすさが変わる
クレジットカードは後払いという性質上、カード会社がリスクを負うため必ず審査があります。年収や職業、他のカードの利用状況などが確認され、審査に通過しなければカードを持つことができません。
デビットカードは即時払いで銀行口座の残高範囲内でしか使えないため、原則として審査はありません。銀行口座を持っていれば誰でも作れるのが大きな特徴です。
対象年齢にも差がある
クレジットカードは原則として満18歳以上が対象で、高校生は申し込めないケースが多くなっています。一部のカード会社では18歳以上の高校生も申し込める場合がありますが、例外的です。
デビットカードは一般的に満15歳以上から申し込み可能です。金融機関によっては16歳以上としているところもありますが、いずれにしても高校生でも持てる点が特徴です。
支払い方法と利用限度額の違い
カードを使う際の柔軟性や制限は、両者で大きく異なります。日常的な買い物から高額商品の購入まで、どう使い分けるべきかを理解しておきましょう。
支払い回数の選択肢
クレジットカードは支払い回数を柔軟に選べます。1回払いはもちろん、分割払い、リボ払い、ボーナス払いなど複数の選択肢があり、高額商品を購入する際に支払いの負担を分散できます。ただし3回以上の分割払いやリボ払いには手数料がかかるのが一般的です。
デビットカードの支払い方法は1回払いのみです。即時払いという仕組み上、決済額を分割して支払うことはできません。大きな買い物をする際は、口座残高を事前に確認しておく必要があります。
- クレジットカード:1回払い、分割払い、リボ払い、ボーナス払いから選択可能
- デビットカード:1回払いのみ対応
- 分割払いやリボ払いには手数料が発生するケースが多い
- デビットカードは即時払いのため分割できない
利用限度額の設定方法
クレジットカードの利用限度額は審査結果に基づいてカード会社が決定します。増額を希望する場合は再度審査が必要です。限度額は収入や信用情報に応じて設定されるため、個人差が大きくなります。
デビットカードは口座残高が基本的な上限となります。ただしセキュリティの観点から、多くの金融機関が「1回あたり」「1日あたり」「1ヵ月あたり」といった別途の利用限度額を設けています。この限度額は利用者自身で変更できる場合が多いです。
ポイント還元率とお得度の比較
キャッシュレス決済の魅力のひとつがポイント還元です。どちらのカードがよりお得なのか、具体的な数字とともに見ていきましょう。
還元率の傾向
一般的にクレジットカードのほうがポイント還元率は高い傾向にあります。年会費無料のクレジットカードでも1.0%以上の還元率を設定しているものが多く、特定の店舗やサービスでは2%を超えることもあります。
デビットカードは0.2%から1.0%程度が一般的です。ただし最近では高還元率のデビットカードも登場しており、ダイヤモンド・ザイの報道によれば、住信SBIネット銀行の「デビットカードPoint+」は基本還元率1.25%、最大2%還元を実現しています。
| カード種類 | 還元率の範囲 | 特徴 |
|---|---|---|
| クレジットカード | 1.0%~2.0%以上 | 提携店舗でさらに高還元 |
| デビットカード | 0.2%~1.0%程度 | 還元なしのカードもある |
| 高還元デビット | 1.25%~2.0% | 最近登場している |
ポイントの使いやすさ
クレジットカードは独自のポイントプログラムが充実しており、提携店舗での利用やマイルへの交換など選択肢が豊富です。年会費が高いカードほど特典も充実する傾向があります。
デビットカードの中にはポイント還元がないものもあります。ポイント制度があっても、クレジットカードほど多様な使い道が用意されていないケースが多いため、申し込み前に確認が必要です。
年会費とのバランス
デビットカードは年会費無料のものがほとんどです。年会費がかかるデビットカードは少数派で、付帯保険などが充実している特別なカードに限られます。
クレジットカードは年会費無料から数万円のものまで幅広く存在します。年会費が高いほど特典やサービスが充実しますが、利用頻度や金額によっては元が取れない可能性もあります。
使える場所と使えない場所の違い
どちらも広く使えるキャッシュレス決済ですが、一部のサービスでは使えないこともあります。知らずに困ることがないよう、事前に把握しておきましょう。
デビットカードが使えない主なケース
高速道路のETCカードはデビットカードでは基本的に発行できません。即時払いという仕組み上、口座残高不足でゲートを通過できなくなると事故の原因になるためです。高速道路を頻繁に利用する人は、クレジットカードでETCカードを作る必要があります。
ガソリンスタンドでも多くの場合デビットカードが使えません。また月額の定額サービスや公共料金の引き落としについては、デビットカードによって対応が異なります。
- 高速道路のETCカード:デビットカードでは基本的に発行不可
- ガソリンスタンド:多くの店舗で利用不可
- 月額サービス:対応がカードによって異なる
- 公共料金:デビットカードによって対応が分かれる
両方使える場所
コンビニ、スーパー、レストラン、ネットショッピングなど、日常的な買い物の多くは両方のカードで対応可能です。国際ブランド(Visa、Mastercard、JCBなど)が付いていれば、国内外問わず広く使えます。
海外のATMで現地通貨を引き出すことも、国際ブランド付きのデビットカードなら可能です。両替所を利用する手間が省け、多額の現金を持ち歩くリスクも減らせます。
あなたに合ったカードの選び方
それぞれのカードには明確な特徴があり、すべての人に万能なカードはありません。自分のライフスタイルや目的に合わせて選ぶことが重要です。
デビットカードが向いている人
お金の管理が苦手な人や使いすぎが心配な人には、デビットカードが適しています。口座残高以上には使えないため、クレジットカードのように後から請求額を見て驚くことがありません。
18歳未満の高校生や、クレジットカードの審査に通らない人もデビットカードなら持つことができます。初めてのキャッシュレス決済としても安心です。
- お金の管理が苦手で使いすぎが心配な人
- 18歳未満の高校生
- クレジットカードの審査が不安な人
- 初めてキャッシュレス決済を使う人
- 口座残高の範囲内で計画的に使いたい人
クレジットカードが向いている人
高額な買い物を計画的に分割払いしたい人には、クレジットカードが便利です。家電製品や家具など、一度に支払うのが難しい商品でも、分割払いを利用することで無理なく購入できます。
ポイント還元率を重視する人や、旅行保険などの付帯サービスを活用したい人もクレジットカードのほうが選択肢が豊富です。りそなグループの説明によれば、特に海外旅行保険やショッピング保険などはクレジットカードのほうが充実しています。
- 高額商品を分割払いで購入したい人
- ポイント還元率を最大化したい人
- 海外旅行保険などの付帯サービスを活用したい人
- ETCカードが必要な人
- 月額サービスをまとめて支払いたい人
クレジットカードとデビットカードは、それぞれ異なる強みを持つ支払い手段です。後払いか即時払いか、審査があるかないか、分割払いができるかどうかといった基本的な違いを理解すれば、自分に合ったカードを選べるようになります。
日常的な少額決済には即時払いで管理しやすいデビットカードを、高額商品や計画的な支払いにはクレジットカードをというように、用途に応じて使い分けることで、より賢いキャッシュレス生活を送ることができます。