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クレジットカードには買い物ができる機能だけでなく、現金を借りられる機能も付いています。同じカードに備わる機能でありながら、両者は全く異なる性質を持ちます。

この違いを正確に理解しておかないと、思わぬところで利用できなくなったり、想定外の金利負担が発生したりする可能性があります。

機能と目的の根本的な違い

ショッピングとキャッシングは、同じクレジットカードで利用できるものの、その本質は大きく異なります。この違いを理解することが、適切な使い分けの出発点となります。

ショッピングは「代金の立替」

ショッピング機能は、商品やサービスの購入代金をカード会社が一時的に立て替える仕組みです。店舗やネットショッピングでカード決済をすると、その場では現金を支払わず、後日まとめて口座から引き落とされます。

あくまで立替えであるため、1回払いであれば金利や手数料は一切発生しません。これがショッピング機能の大きな特徴です。

キャッシングは「現金の借入」

キャッシング機能は、ATMなどから直接現金を引き出せる機能です。これは立替えではなく、カード会社から現金を借りる行為にあたります。

借入であるため、利用した日の翌日から必ず利息が発生します。たとえ翌月に一括返済する場合でも、利用日数分の利息を支払う必要があります。

項目 ショッピング キャッシング
性質 代金の立替 現金の借入
1回払い時の手数料 無料 利息が発生
適用法律 割賦販売法 貸金業法

利用可能枠の仕組みが異なる理由

ショッピングとキャッシングでは、利用できる金額の設定方法と相互の関係性が特殊です。この仕組みを理解していないと、必要な時に利用できないという事態になりかねません。

キャッシング枠はショッピング枠の内側に存在する

一般的なクレジットカードでは、総利用枠とショッピング枠が同額に設定されています。キャッシング枠はこの総利用枠の中に含まれる形で設定されるため、キャッシングを利用するとショッピングで使える残高も減少します。

例えば総利用枠50万円・キャッシング枠20万円のカードで、キャッシング10万円を利用した場合、ショッピングで使える残高は40万円になります。これは「50万円-10万円=40万円」という計算です。

  • 総利用枠50万円のうち、キャッシング10万円を使用
  • 残りの利用可能額は40万円
  • この40万円をショッピングで使える
  • キャッシング枠の残りは10万円

逆に、ショッピングで40万円を使った後は、キャッシング枠が20万円設定されていても、実際に借りられるのは10万円までとなります。

なぜこのような仕組みになっているのか

これは、カード会社が設定する「返済能力の範囲」を示しているためです。総利用枠は、その人が無理なく返済できると判断された金額の上限を表しています。

ショッピングで大きな買い物をした後にキャッシングで現金も借りてしまうと、返済負担が過大になる可能性があります。そのため、両方を合わせた利用額が総利用枠を超えないよう制御されています。

金利と手数料の違いが生む返済負担の差

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ショッピングとキャッシングでは、同じ金額を利用した場合でも最終的な負担額に大きな差が生じます。この差を正確に理解することが、賢い利用につながります。

ショッピングは1回払いなら負担ゼロ

ショッピング機能の最大の利点は、1回払いを選択すれば金利や手数料が一切発生しない点です。10万円の買い物をしても、支払うのは10万円だけです。

分割払いやリボ払いを選択した場合のみ、実質年率12.0~15.0%程度の手数料が加算されます。

キャッシングは常に利息が発生する

キャッシングの金利は実質年率15.0~18.0%程度に設定されているケースが多く、借入した日の翌日から利息が発生します。

10万円を実質年率18.0%で30日間借りた場合、利息は約1,479円となります。一見少額に見えますが、返済期間が長くなるほど利息負担は膨らみます。

利用額 ショッピング(1回払い) キャッシング(30日後返済・年率18%)
10万円 10万円(手数料なし) 約10万1,479円
30万円 30万円(手数料なし) 約30万4,438円

支払方法の選択肢の違い

ショッピング機能では、1回払い・2回払い・ボーナス一括払い・分割払い・リボ払いなど、複数の支払方法から選択できます。購入金額や家計の状況に応じて柔軟に選べる点が特徴です。

一方、キャッシング機能で選択できるのは1回払いかリボ払いのみです。選択肢が限られているため、計画的な返済がより重要になります。

総量規制の対象かどうかという決定的な違い

ショッピングとキャッシングでは、適用される法律が異なります。この違いは、利用できる金額や審査に大きく影響します。

ショッピングは総量規制の対象外

ショッピング機能には割賦販売法が適用され、貸金業法の総量規制は適用されません。年収に関係なく、カード会社の審査で認められた範囲内であれば利用できます。

リボ払いや分割払いを利用していても、これは「借入」ではなく「代金の立替」という扱いになるため、総量規制の計算には含まれません。

キャッシングは総量規制の対象

キャッシング機能には貸金業法が適用され、総量規制の対象となります。これにより、年収の3分の1を超える借入はできません。

他のカード会社や消費者金融からの借入も合算されるため、すでに他社から借入がある場合、希望通りのキャッシング枠が設定されない可能性があります。

  • 年収300万円の場合、全ての貸金業者からの借入合計が100万円まで
  • 他社で70万円借りている場合、新たに借りられるのは30万円まで
  • 収入証明書の提出を求められることがある

この違いが持つ実務上の意味

総量規制の対象かどうかは、カード発行時の審査だけでなく、増枠申請や他のローン審査にも影響します。キャッシング枠を高く設定していると、住宅ローンなどの審査で不利になる場合があります。

一方、ショッピング枠は総量規制に含まれないため、リボ払いの残高があっても他社での借入には直接影響しません。ただし、支払能力の判断材料としては考慮されます。

ポイント還元の有無という見落としがちな違い

ショッピング機能を利用すると、カード会社のポイントプログラムに応じてポイントやマイルが貯まります。還元率はカードによって異なりますが、0.5~1.0%程度が一般的です。

一方、キャッシング機能の利用ではポイントは付与されません。現金を借りる行為であるため、ポイント還元の対象外となります。この違いも、長期的に見ると無視できない差となります。

同じクレジットカードに付帯する機能でも、ショッピングとキャッシングは性質が全く異なります。ショッピングは代金の立替であり1回払いなら手数料不要、キャッシングは現金の借入で必ず利息が発生します。

利用可能枠の仕組みや総量規制の適用有無も異なるため、それぞれの特性を理解した上で使い分けることが重要です。